研究内容

研究内容

GVHD

造血細胞移植の成績向上に向けた研究

 造血細胞移植は、白血病・リンパ腫やさまざまな血液疾患に治癒をもたらしうる最終治療法であり、本治療法の成績向上は白血病などの治療成績の向上に直結します。造血細胞移植においては、ドナー由来の免疫細胞は強力な白血病抑制効果(移植片対白血病効果: GVL)をもたらすと同時に、最大の合併症である移植片対宿主病(Graft-versus-Host Disease: GVHD)を起こします。このように移植に伴う免疫学的な側面を理解することが移植成績の向上には必須です。われわれは、患者さんを診察する中で、“なぜこんな症状が起きるのだろう?”“この検査値異常はなぜだろう?”といった素朴な疑問を取り上げ、これを基礎研究によって解明し、最終的に臨床に還元する、”from bedside to science”の視点を大切にして研究を進めています。

 基礎研究での最新の成果として、GVL減弱の新たな分子メカニズムを世界に先駆けて発見しました(Asakura: JCI 2010)。また、患者さんの樹状細胞がGVHDを引き起こすこと(Koyama: Blood 2009) (Duffner: J Immunol 2004)、NKT細胞によるGVHD抑制効果(Hashimoto: J Immunol 2005)、移植後免疫再構築の異常が慢性GVHDの発症に関わること(Sakoda: Blood 2007)(Teshima: BBMT 2008)、新規免疫抑制剤のGVHD予防効果の検討(Hashimoto: EJI2007)、母子免疫寛容がGVHDを軽減するメカニズム(Matsuoka: Blood 2006)(Teshima: AITE 2007) (Aoyama: Blood 2009) (Aoyama: Chimerism 2010)などの成果を挙げています。臨床研究では、ミニ移植の成績に関する全国調査研究(Teshima: BJH 2005)(Kim: IJH 2008)、慢性GVHDに対するリツキシマブの安全性と有効性の検討(Teshima: IJH 2009)、アスペルギルス感染症の血清診断に関する研究(Mori: AJH 2010)、サイトメガロウイルスに対する新規抗ウイルス剤の安全性と効果の検討(Takenaka: IJH 2009)が最近の成果です。最近では、腸管幹細胞刺激因子を利用した移植後腸管傷害の軽減、白血病幹細胞を標的としたGraf-vs-Leukemic stem cell効果、GVHDと感染症のクロストークといった、全く新しい視点から、新世代型の造血細胞移植へと展開しています。このように臨床指向の視点から基礎研究、臨床研究を一体となってバランスよく進めているのがわれわれのラボの特徴です。

造血分化

 人の体を構成する皮膚や神経、肝臓や消化管、筋肉に血液といった多種多様な臓器が、もともとはたった一つの受精卵から分化した細胞によって構成されることはよく知られています。しかし、この分化のメカニズムではどのような因子が働き、調節を担っているのでしょう?胚性幹細胞やiPSのような多能性幹細胞を得ることができるようになった今、これらを臨床応用するためには機能的な細胞へと分化を誘導/制御することが課題となっています。このためにはまず、正常の分化過程においてどのような因子が役割を担っているかを解明する必要があります。

 細胞分化は胎生期にだけ起きるわけでなく、成人になってからも様々な臓器に存在する組織幹細胞から機能的な成熟細胞を供給する際に生じています。そしてこの組織幹細胞のうち、現在までに最もその研究が進んでいるのが血液幹細胞です。造血システムでは多分化能と自己複製能を併せ持つ造血幹細胞を頂点として、その下流に分化能が限定されながらも非常に高い増殖能をもった前駆細胞が存在し、さらに実際の機能を果たす成熟血球が存在します。私たちは最新型の高速セルソーターを用いて血液の幹/前駆細胞分画を分取し、細胞が分化する上でたどる経路の解明や、その際に関与する因子の作用を研究しています。例えば、細胞の系統選択において非常に重要な転写因子に遺伝子変異を加えたマウス造血の解析をすることで、それらが造血前駆細胞や成熟細胞においてどのような働きをしているのか解析しています。さらには、マウス造血のみならずヒト造血システムの解析も行い、両者の造血の類似点とともに相違点も明らかにしています。このように私たちはマウスおよびヒトの造血システムを用いて細胞分化の解析を行い、そこからの知見による病態の解明に向けて研究を行っています。

白血病幹細胞

血液疾患の病態解明と根治への挑戦

 「幹細胞」、それは多様な成熟細胞に分化する能力(多分化能)と自ら同じ性質を維持する役割(自己複製能)とを合わせ持つ希少な細胞です。この幹細胞コンセプトがいち早く確立され、さらに病気と闘う患者さんの治療に応用され確実な成功を収めている分野こそが血液内科です。難治性血液疾患に対する造血幹細胞移植は、最も進んだ再生医療と言えます。

 私たちは血液内科医としての基礎に立って、造血幹細胞を頂点とする正常分化メカニズムを研究してきました。この研究成果は世界的に高い評価を得ており、血液学に関する多数の論文に引用されています。一方で、腫瘍化した造血組織においても同様な幹細胞コンセプトを適用できることが解ってきています。ヒトの細胞を許容できる重症免疫不全マウスの開発と、幹細胞のようにごく少数の細胞を純化する技術の進歩が相まって、「白血病幹細胞」の存在が証明されたのです。自己複製能をもつ白血病幹細胞の残存が病気の再発に繋がると考えられますので、これを有効に死滅させることで理論上治癒が得られるはずです。私たちは急性骨髄性白血病幹細胞を純化して詳細に遺伝子発現を解析することで、正常造血幹細胞には発現していない白血病特異的分子を突き止めました。さらに、その分子を標的とした新規治療薬を開発し、ヒト白血病細胞を移植したマウスで劇的な治療効果を得ることに成功しています。実際の患者さんの治療に早く貢献できるよう、霊長類の動物モデルで研究を重ねています。また、白血病のみに留まらず、骨髄増殖性腫瘍、骨髄異形成症候群、悪性リンパ腫など様々な造血器悪性腫瘍の幹細胞同定にチーム一丸となって挑戦しています。世界の名だたる研究施設に引けを取らない、最新の設備が整っている研究室だからこそできる最先端の研究がここにあります。高邁な研究マインドと情熱にあふれた皆さんの参加を心よりお待ちしています。

アレルギー

 今や「国民病」とも呼ばれるアレルギー性疾患ですが、その病態や治療に関しては、依然として解決すべき多くの問題が残っています。アレルギー性炎症は、Th2 細胞を中心とした「Th2 cell paradigm」と呼ばれる概念に基づき議論されてきましたが、近年、この枠組みでは説明できない多くの現象が発見されています。ここで注目され始めたのが、Epithelial cell-derived cytokineと呼ばれる気道や消化管粘膜上皮から産生されるサイトカイン(TSLP, IL-25, IL-33)と、そのシグナルの受け手である好酸球・好塩基球・肥満細胞などの自然免疫担当細胞です。アレルゲン刺激により上皮から産生されたEpithelial cell-derived cytokineは、Th2細胞を介する事なく、直接、好酸球・好塩基球・肥満細胞を刺激し、アレルギー性炎症を惹起します。これがTh2反応非依存性の、新たなアレルギー性炎症メカニズムだと考えられているのです。

 我々、アレルギー部門では、マウス造血分化研究グループとともに、好酸球・好塩基球・肥満細胞の制御によるアレルギー性疾患の治療を目指して、研究を行っています。我々は既に、マウス好酸球・好塩基球・肥満細胞に分化する最も上流の前駆細胞の同定に成功し、これらの細胞の分化制御メカニズムを明らかにして来ました。大変興味深い事に、これら前駆細胞の一部は、Epithelial cell-derived cytokineのレセプターを既に発現しており、これらのシグナルを受け反応する事がわかって来ました。更には、これらマウス前駆細胞群のヒトカウンターパートの同定も進めています。アレルギー性炎症システムをマウスモデルを用いて明らかにし、その成果をヒトに応用する事により、アレルギー性炎症の理解のみでなく、新たな治療法の開発に貢献できればと、日々努力しております。

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